シンプルな気持ち

こんなことを自分がするとは思ってもいなかったのですが、3月に右手の指の関節を捻挫しました。ピアニストとしては最悪で、最初は、半日くらい休めばと思っていたのですが、とんでもない!1ヶ月近く経つ今でも、まだ100%のパワーでは弾けません。鍼などに生きながらようやく治る兆しが見えてきました。昔、私の恩師であるEd Bednerというピアノの先生に、「指というのは日常生活で使っているのだから毎日気をつけろ!」と言われていて、まあそこそこ気をつけてはいたのですが、今回ばかりは、やってしまいました。

ですが、まあ外傷ですので腱が切れたわけでも、骨を粉砕したわけでもないので、時間が経てば治癒していくわけですが、今回20年ぶりに指の怪我をして、思ったことがあります。

怪我をしてしまって、ピアノが弾けなくなると、ただただシンプルにピアノ弾きたいなと思うんです。ピアニストですから毎日ピアノを何十年も弾いてきたわけです。弾きたいからそれを職業にまでしたわけです。でも、それを毎日やっていると、シンプルに「ピアノを弾きたい」、という気持ちを忘れていきます。しかも、怪我をした3月は大学も春休みですし、それほど何か大きなコンサートがあったわけではありません。つまり、たとえ怪我をしていなくても、多分、いつも通り、ただ練習したり曲を書いたりして過ぎていく毎日だったと思います。

ですが、楽しみな演奏会があった、あれをどうしてもピアノでやりたかった、みたいにこととは全く関係なく、シンプルに、ピアノ弾きたいなと思うわけです。

人は何かに一生懸命になったり、一つのことを長く続けていくと、自分がそれを「やりたい」というシンプルな気持ちで始めたことを忘れていきます。Daniel Barenboimという世界的なピアニストが、クラシック界のレジェンド、Vladimir Horowitzのレッスンで「この楽器(ピアノ)で自分を表現したという気持ちを一生忘れるな」と言われたというインタビューを昔見ました。しかもこのアドバイスがBarenboimの中で一生残っているそうです。

ではなぜHotowitzがこんなアドバイスをしたか?

それは、彼が、人間はシンプルな気持ちを忘れるのを知ってたからですよね?人は、絶対忘れないものを「忘れるな」とは言いません。忘れるのを知ってるから「忘れるな」と言うわけです。

これって、音楽に限らず全てに当てはまることだと思います。

今回の怪我で私が学ばなきゃいけなかった宿題はこれだったかもしれません。シンプルな気持ちを大切に!

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