私は日本で生まれ、東京で育ったいわゆる普通の日本人です。ですが、22歳でアメリカの大学に行き、卒業後はその大学で教え、結局15年間アメリカで生活しました。アメリカには色々な日本人がいます。それこそ戦後にGIと結婚してアメリカ人になった高齢の日本人、戦前にアメリカに移民した親を持つ2世や3世、仕事でアメリカに来てそのまま移住した日本人、、、NYにいるとそれこそ本当に色々な日本人に会います。違法滞在の人も多くいます。そう言う私も厳密に言うと違法滞在であった期間もあると思います(1つのビザから別のビザへの移行期間など).
当時よく冗談で言っていたのですが、「始めて会う日本人と話して5分以内にその人がなぜアメリカにいるかが、わからない人はやばいよね」、つまり、違法であれ何であれ、誰もが何かしらの理由でアメリカにいるわけで、その理由が何であってもそれは個人のことなので、敬意を持つけれど、何でいるかわからない人(自分で言えない人)は謎だよね、という意味です。
私は東海岸、しかもボストンという当時は日本人が比較的少ない地域にいましたが、西海岸はもっと謎の日本人が多いと友人に聞いたこともあります。
日本人は比較的自国に留まることが多いと思いますが、世界的に考えると色々な国の人々が色々な理由で国外で生活をしたり、ほかの国の市民になったりしているのだと思います。ヨーロッパのジプシーや今問題になっている難民もそうですし、日本に在住する中国人にも独特のコミュニティーがあるようです。外国生活をすると、そのような同国の人種の繋がりができることは当然で、世界は昔から色々な人々が行き交い今に至っています。
私は子供の頃からアメリカに憧れを抱いていました。その一番の理由は、アメリカが色々な人種の移民の国で、ありとあらゆる考えを持つ人々が一つの国となって、自分の国の在り方を模索することがとても人間的で魅力的に思えたからです。一人の人間と同じように素晴らしい部分も汚い部分もあり、それが歴史の中で揺れ動いてきました。酷い時は限りなく酷く、素晴らしい部分は日本では絶対ありえないような素晴らしさがある、、そこが魅力でした。
そんなアメリカは今は分断され、全体主義国家への道を歩んでいるようにしか私には見えません。民主党と共和党、、この2大勢力はアメリカを昔から2分してきました。アメリカではよくこの2党の政策について友人などの間でも議論されますし、外国人でありながらも長くアメリカに住んだ私にも意見はあります。
ですが、今のアメリカは民主党・共和党の議論を逸脱して別な次元に移ろうとしているように思えます。そしてその方向性は残念ながら「全体主義」です。
第一次大戦後のドイツ国民を次の悲劇に導いたのは、全体主義と巧みな政治力です。日本も全体主義から起こった戦争という結末で多くの国の人々を傷つけ、また自国も傷つきました。
全体主義は成立しないことを人類は学んだはずです。なぜかというと私たちは決して「全体」にはなれないからです。アーティストであってもなくても、人は「全体」ではなく「個人」だからです。

ジョルジュ ビゴー